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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)555号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人中村源次郎上告趣意第三點について。

本點(イ)の所論については、第二點において説明のとおり、原審は推薦連署表が前後二通あり前の一通は破棄されたとの事実は何れも之を認めないところであるから論旨は理由がない。次に(ロ)の所論については、教育委員會法第一六條の規定に依り、立候補届出の事前選擧人六十名以上の連署推薦を必要とするものであるから、右推薦連署行爲の範圍においては、所論事前の選擧運動は適法の行爲と謂わねばならぬ。止だ追放該當者が此行爲を爲すことは、昭和二十二年勅令第一號所謂追放令違反の罪を構成することになるのである。從って原審が被告人の本件行爲に所論衆議院議員選擧法第九五條を適用しなかったのは當然である。論旨は理由がない。次に所論(イ)の點については、所論通名による署名なるため、推薦行爲としては假令法律上効力のないものであるとしても、追放令第一五條第一項の「その他の政治上の活動」に該當する行爲であることは明らかである(尚此點については、後出山本辯護人上告趣意第一點に對する説明引照)。論旨は理由がない。

辯護人山本武雄上告趣意第一點について。

公職追放令第一五條に所謂「政治上の活動」とは、原則として政府、地方公共團體、政黨その他の政治團體又は公職に在る者の政治上の主義、綱領、施策又は活動の企畫、決定に參與し、之を推進し支持し若しくは之に反對し、或は公職の候補者を推薦し支持し若しくは之に反對し、或は日本国と諸外国との關係に關し論議すること等によって、現実の政治に影響を與えると認められるような行動をすることを言うものと解するを相當とすることは、既に當裁判所の見解とするところである(昭和二十三年(れ)第一八六二號昭和二四年六月一三日大法廷判決参照)。仍って被告人の原判決認定の所爲を考察すると、大津市教育委員會委員の候補者を支持することによって、現実の政治に影響を與えると認められる行動であることは、寔に明らかである。そして、原判決がその事実理由において「云々選擧運動を爲し」及び「云々推薦届書に……連署を爲し」と判示しているのは、右當裁判所の見解と同旨に出でた政治上の活動の趣旨と解すべきであるから、論旨は理由のないものである。次に本點後段の所論については、中村辯護人上告趣意第五點において既に説明したとおりである。論旨は何れも理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

仍って、刑訴施行法第二條、舊刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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